平成25年度大阪優秀発明表彰


受 賞 決 定


 昭和51年より、大阪発明協会は、大阪府において、優れた発明を完成し、わが国の科学技術の発展に大きな足跡を残した人々の偉大な功績を顕彰するため、「大阪優秀発明大賞」を設立し、大阪府の産業社会の貢献した企業および発明者に対して表彰を行ってまいりました。昨年度からは「大阪優秀発明大賞」部門と、中堅企業・中小企業を対象にした「大阪チャレンジ発明賞」部門を設立し、「大阪優秀発明表彰」として表彰を行っています。
 そして今年度は厳正なる審査の結果、大阪優秀発明大賞1件、大阪チャレンジ発明賞2件、大阪発明奨励賞3件を決定し、平成26年1月29日(水)大阪大学中之島センターにて表彰式が挙行されました。
 
   


平成25年度大阪優秀発明大賞 (敬称略)

 
 「ダウンジャケットの側地として用いられる織物「シルファインRN」及びその製造方法」
  (特許第3797486号)
    福 西 範 樹(東洋紡株式会社)
    松 井 美 弘(東洋紡株式会社)

<本発明の概要>

(背景と課題)
 登山等に用いられるアウトドア用品には、運搬時の疲労を軽減する目的で軽量化が求められている。また、バッグパック等の限られたスペースに収納する必要があるため、コンパクト性も重要な要求性能の一つである。この軽量化、コンパクト化は、ダウンジャケットや寝袋、ウィンドブレーカー、レインウェア、テント等の織物が使われる衣服、用具にも求められており、携行品に占める重量および体積の割合の高さから最大の訴求点となってきている。
 織物を軽量化、コンパクト化するには、より細い糸条を用いる方法、あるいは織密度(単位長さあたりの経糸、緯糸の本数)を低くする等の方法がある。しかしながら、前者はアウトドア用品に求められる破れ難さ(引裂強力の高さ)や耐磨耗性との両立が難しく、後者はダウンジャケットや寝袋のように羽毛等の中ワタを使用する製品では吹き出しが問題になる上に、縫い目に力が掛かると糸がずれ穴空きを生じてしまう等の問題があり、軽量性、コンパクト性と他の機能を両立する織物の開発が求められていた。

本発明の特徴
 本発明は1万mあたり25g以下の細い糸条を用いているにも関わらず、織物の破れ難さの指標である引裂強力がアウトドア用途で求められる10N以上あり、かつ中ワタの吹き出しの指標である通気度が同用途で求められる1.5cm3/cm2/sec以下を確保した織物を提供するものである。本発明以前には、両物性を確保している重量50g/m2以下の織物は上市されていなかったが、2003年に1万mあたり22gの糸条を用いた35g/m2のシルファインR20を上市、2005年には1万mあたり11gの糸条を用いた26g/m2のシルファインR10を上市している。本発明以前は、高い強度を持つ糸条を使用することが、織物の引裂強力を上げる手段になると考えられてきたが、実使用を想定した引き裂きの原理を探求することにより、ポリマー重合度、糸条の強伸度バランスの最適値を見出し、糸条設計に反映している。また、本発明以前には用いられることのなかった糸条繊度、単糸繊度共に低い原糸開発により軽量、耐久性、コンパクト性を両立している。

                                                 



平成25年度大阪チャレンジ発明賞(敬称略)

 
「避雷器接触子接合構造」 (特許第5339133号)
    木 本 健 治(音羽電機工業株式会社)
    三 島 健七郎(元 音羽電機工業株式会社)

(背景と課題)
 この発明は、着脱可能な電気部品における大電流を流せる接合部構造に関するものである。落雷が発生すると、電源線に接続されていた機器に、瞬間的な大電流が流れ(以下雷サージ)、機器を故障させる場合がある。このような故障を防止するために使用されるのが避雷器(以下SPDと記載)である。このSPDでは、保全作業で交換することがあり、SPDの装着構造としては、着脱可能な形態が多い。そのためにSPD本体の刃形接触子を端子台の刃受接触子に挿入して電気的に導通させる接続構成になっている。従来においては、この接合部構造は電源コンセントに類似した構造で、大電流が流れた場合には接触圧低下と推定される電気的接触不完全により局部的放電が発生することがあり、最悪接触子が溶着することも起こった。

本発明の特徴
 本発明は、接合部を流れる電流のクーロン力を活用できるようにするため、接合部の刃型構造を改善させたもので、図1がSPDの外観構成であり、図2が、接続部拡大概念図で、(1)が従来構造で、(2)が本発明を表している。平行2線の電線に電流が流れた場合、同方向の電流であれば電線間に引力が働き、逆方向電流では斥力となる。そこで、刃受け接触子の接合部ではこのクーロン力で接触圧が増加するような電流方向にしている。従来構造では接触子間で斥力が働き、接点の接触圧が低下してしまう構造であった。本発明による構造では接触子間では電流方向が同じであり、接触子間に引力が働くこと、加えて、折り曲げ部では、逆方向電流にして斥力となるようにし、接触子間の接触圧を増大させる方向に働かせて、電流を円滑に流すことができるようにしてある。





 「ウエブの巻取巻替におけるロスの皆無と高品質化」 (特許第4362790号)
    上 山   實(株式会社不二鉄工所)
    高 木 匡 勇(株式会社不二鉄工所)
    川 村 賢 辰(株式会社不二鉄工所)

1. ローテーションワインダー
(1)用途
  プラスチックフイルム等ウエブの製膜工程の巻取りに使用される全自動巻取機に関するものである。

(2)技術的に解決された点
  ウエブ等の成形は、連続的に行われその巻取りはウエブを停止することなく、一定の長さを順次ロール状に巻き上げる。このため、通常2つの巻取り軸を具備し 、これに逐次ウエブを巻き上げていくターレット型巻取機が用いられる。
 この巻取機は、一つの巻軸に一定長さのウエブを巻き取るとターレットを旋回させ、満巻軸と新軸を入れ替え、新軸の直近のウエブを切断して新軸に巻き替える。  この場合ターレットの旋回開始から切断巻替えを終えるまでのウエブの経路の変化、巻取りロールへの侵入角度の変化、巻取りロールに接触するタッチロールの 位置等、不安定な過渡現象が起こる。これらの現象は巻取りロールの品質を悪化させ、皺、蛇行等の不良によるロスを発生させる。本発明はこれらの不安定な過渡 現象の発生をほとんど皆無とした「ローテンションワインダー」を新規に開発をした。 (図1はターレットワインダーの巻き替え動作を示す)

(3)発明等の構成及び作用 
  ローテンションワインダーは、その機枠の中にそれぞれ独立して動作をする二組の巻取りヘッドを有し、一組の巻取りヘッドは専用の駆動系から成る巻取り軸と これに付属するタッチーラから構成されている。この一組の巻取りヘッドは水平に直進動作をしながら搬送されるウエブの巻き始めから巻き終わるまでの不安定な 過渡現象を発生させること無く巻き取ることが出来る構造になっている。
 (図2はローテンションワインダーの巻き替え動作を示す) 

(4)発明等の技術的効果
  ローテンションワインダーは巻取り軸とタッチローラが一対のため、通常の巻取り中も巻替時も巻取り軸とタッチローラの位置関係及びウエブの進入角度のいず れも変化せず、巻取り品質に最も重要なウエブの張力変化が無い。また、巻取りヘッドは独立した構造上、巻取り軸の駆動も巻取モータと直結出来ることからメカ ロスの少ない高精度のトルク制御が可能となっている。

(5)新規性のあるところ
  最近の高機能性フイルム分野はより一層の巻取り品質の向上とロスの低減が求められており、本発明は過去に無い全くの新しい構造で、将来の新材料にも展開で きる次世代ワインダーと言える。









平成25年度大阪発明奨励賞(敬称略)

「ガス用ステンレスフレキシブル管用継手の発明」 (特許第5202178号)
   東野 剛年(JFE継手株式会社)
   木村 充志(大阪ガス株式会社)
   植田 陽介(大阪ガス株式会社)
   岸本 裕司(JFE継手株式会社)



(背景と課題)
 住宅内ガス配管工事の主流材料であるフレキ管を接続するために欠かせないフレキ管継手は、使用数量も多く、一層の施工品質の安定が求められている。現在主流の簡易に施工できる継手は、工具による継手ナット部の締付け作業が不要で簡便に施工できる特徴を有しているが、継手に対しフレキ管が適正位置まで挿入されていない状態でも施工者が施工中に気づかない場合がありえる。また、波状のフレキ管の山部(凸部)にシール部が配置される構造で、挿入前のフレキ管の状況(=へこみや傷がないこと)を十分目視確認する必要があり、簡素な手順の反面、施工者の技量、判断に依存する点が多いことが課題であった。

(本発明の特徴)
 シール部材とフレキ管抜け止め部材を一体化し、フレキ管の挿入に伴い継手内を移動するよう配置し、移動時にテーパー部によりフレキ管の谷部に入り込み密着する構造となっている。
 シール部はフレキ管の谷部に密着するため、フレキ管の状況(=へこみや傷等)に対する影響が低減されシール性が一段と向上している。また、シール部が谷部に入り込む感覚は明瞭でフレキ管挿入完了確認も可能としている。
 フレキ管抜け止め部材はフレキ管を適正位置まで挿入しないと障壁となり押輪が押し込めないため、フレキ管の挿入不足時には施工者は押輪が押し込めず、施工中に施工不良に気づくことができる。
 このようにヒューマンエラーによる施工不良を防ぐ機構も多重に設け、施工品質の安定を図っている。
 押輪(ナット)操作時に工具を用いない、フレキ管接続後に継手が回転する等、従来継手の良好な施工性を維持しつつ、フレキ管の谷部にシール部が入り込む構造により、低温でゴムが硬くなる冬場でのフレキ管挿入力の軽減も実現している。



・「オイルポンプロータ「GeocloidR(ジオクロイド)」」 (特許第4600844号)
   魚住 真人(住友電工焼結合金株式会社)
   佐々木 陽 充(住友電工焼結合金株式会社)
   吉田 健太郎(住友電工焼結合金株式会社)
   江上 雄一朗(住友電工焼結合金株式会社)


(背景と課題)
 自動車の燃費改善は社会の大きなニーズである。本発明は、自動車の機械要素にオイルを供給するオイルポンプのフリクションを低減し、燃費改善に貢献するオイルポンプロータの歯形の設計手法に関する物である。従来の歯形設計手法では、歯丈や歯数の設定自由度が低く、高吐出量などポンプの要求特性を満足するために、無用にロータを大きく設計しなければならないという問題点があった。

(本発明の特徴)
 本設計手法により、それらの設定自由度を高めることができる。従来はロータの歯形曲線を創成する作図パラメータには相互に制約があり、設計の自由度が極めて低かった。そのパラメータを自在に変化させることに最大の特長を持ち、歯形曲線の設計自由度は無限である。一例を挙げると、同一ロータ径(外径60o)で歯数を6枚から8枚に増やすことで、吐出量を約10%向上、また、同一吐出量(3?/回転)のロータでは、外径を約10%縮小し、その駆動トルクを約25%低減することができる。
 この設計手法を用いてポンプの小型化、高吐出量化を実現し、更にはロータの寸法最適化によりポンプを駆動させる力(駆動トルク)を低減、2011年から自動車低燃費技術の最先端を走るハイブリッド車で実用化されている。また、この設計手法は自動車分野以外にも多くの分野のポンプ設計に適用可能であり、省エネ、省資源等の社会ニーズへの対応も期待できる。
 



・「融雪KG式踏切舗装板」 (特許第5336319号)
   清田  穣(清田軌道工業株式会社)


(背景と課題)
 東北地方をはじめとする寒冷・降雪地域では、積雪や凍結による交通事故が多く、除雪や融雪などの事故防止策が大きな課題となっている。鉄道と道路が平面交差する踏切道は双方にとって重要な施設であり、踏切道での事故は特に重大な結果を招く恐れがある。
 除雪は機械や人力により行われるが、踏切道内では鉄道関係の諸設備が支障して、除雪車等の機械力では十分に行うことができないため人力に委ねられることが多く、その作業は時間や労力に制約のある危険なものとなっている。
 また融雪装置としてはこれまでに、地下水を散布する装置や踏切舗装板に融雪用発熱体を埋設した装置などがある。前者は鉄道施設に悪影響を及ぼし、後者では自動車通行等の繰り返し荷重に対する発熱体の強度が不足して、内部でヒーター線が断線するリスクが大きく、断線した場合には舗装板全体を交換しなければならないなど、耐久性や故障時の補修等に課題があった。

(本発明の特徴)
 本発明は、KG式踏切(特許第1980328号)のゴム舗装板に筒状体(鋼管)を数箇所埋設し、その筒状体の中に発熱繊維からなる電熱ヒーター(ブレードヒーター)を配線するものであり、この電熱ヒーターの発熱により筒状体を介して舗装板の表面温度を上昇させ、踏切道内の雪を融かすシステムである。
 電熱ヒーターは舗装板に埋設した筒状体の中で分離・独立しているため、配線や撤去、点検や交換などの際に、その都度舗装板を撤去する必要が無く、踏切道の通行止め規制も不要である。また、電熱ヒーターが自動車通行等の外力を直接受けることが無いため、これによる損傷・劣化を防止することができる。さらには、KG式踏切の舗装板をベースとしているため、一体成型した舗装板が軽量であり人力施工・繰り返し使用が可能であるという特徴も継承されている。



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