平成16年度大阪優秀発明大賞


受 賞 決 定


 当事業は、昭和51年より大阪府において、優れた発明を完成し、わが国の科学技術の発展に大きな足跡を残した人々の偉大な功績を顕彰するため、毎年実施しております「大阪優秀発明大賞」の受賞者が過日決定されました。
 本年度の応募件数は10件で、厳正なる審査の結果、大賞1件、発明賞5件、功績賞1件を決定し、平成17年1月19日(水)大阪第一ホテルにて表彰式が挙行されました。
 

   


平成16年度大阪優秀発明大賞

 
 「誘導加熱用高効率インバータ」 (特許第3460997号)
    弘 田 泉 生 (松下電器産業株式会社)
    藤 田 篤 志 (松下電器産業株式会社)
    宮 内 貴 宏 (松下電器産業株式会社)
    北 泉    武 (松下電器産業株式会社)
    藤 井 裕 二 (松下電器産業株式会社)

    新 山 浩 次 (松下電器産業株式会社)

<本発明の概要>

(背景と課題)

本発明は、誘導加熱調理器等、誘導加熱装置に関するものである。アルミニウムを誘導加熱するには、加熱コイル電流を高周波化(従来の約3倍)する必要があり、従来のインバータでは、スイッチング素子の駆動周波数がそれに伴い増加するので、スイッチング損失が著しく増大すること、また、全ての材質の金属を加熱するためには加熱コイルの巻数切り換えが不可欠で、加熱コイル及びインバータ構成が複雑化することがオールメタル対応誘導加熱調理器の実用化における主要課題であった。

(本発明の特徴)

本発明に係るインバータは、入力電圧を昇圧しかつ平滑した直流電圧を入力し、交互に導通する2石のスイッチング素子(実施品はIGBT)により加熱コイルに共振電流を発生させ、アルミニウム加熱時は、当該共振電流は、スイッチング素子の駆動期間より短い周期で発振し、スイッチング素子はその電流が流れ始めてから2周期目に到達して以降であって、そのスイッチング素子に電流が流れている期間内にその駆動が停止される構成を有することを特徴とする。この発明によれば、加熱コイルには、スイッチング素子の駆動周波数(実施品は20kHz)のn倍(n≧2)の周波数の高周波電流(実施品は3倍の60kHz)が供給可能となり、高周波電流の表皮効果を利用してアルミニウムを高効率で誘導加熱可能となるとともに、スイッチング素子の駆動周波数を低くしかつ低損失モードでスイッチさせることによりスイッチング損失を大幅に抑制する(約260W→約100Wに低減)作用がある。さらに、加熱コイル電流の周波数とスイッチング素子の駆動周波数の比率を、制御部により大幅に変更できるという作用及び入力電圧を昇圧してインバータに供給する作用があることから、加熱コイルの巻き数を変更することなく、共振コンデンサの容量を切り換えるだけで、全ての金属を十分大きな出力範囲で誘導加熱による出力可変制御をすることができる。以上のように、本発明は誘導加熱電流の高周波数化が格段に容易となり、高導電率かつ低透磁率の金属製負荷の加熱効率の大幅な向上が図れる。併せて、加熱コイルの巻数切り換えが不要となること、及び鍋音の発生を抑制できるという効果を奏することにより、安価で使い勝手の良いオールメタル対応誘導加熱調理器等の誘導加熱装置を提供することができる。



       図1 本発明のインバータ    



平成16年度大阪優秀発明賞

 
「デジタルオーディオ用光ファイバリンク(光ミニジャック)」 (特許第3001750号・3505168号)
    溝口 隆敏  (シャープ株式会社)


 本発明の光コネクタ(以下光ミニジャック)によれば、小型化を図っただけではなく、1つのコネクタで電気信号と光信号の共用を可能とし、しかも従来の電気プラグを使用可能としたため、ポータブルMD、ポータブルCDなどへの搭載が普及してポータブル機器の音質向上に貢献した。


 「自動包装機」 (特許第2797164号)
    菅  泰孝  (茨木精機株式会社)

ブロック状の鶏肉を、それを容れるトレイと一体に、シュリンクフィルムでもって緊縮包装する装置に関するものである。従来装置では、トレイに収容する鶏肉の上に被せた四角形のカットフィルムの四辺を前記トレイの底面に回し重ねして溶着し前記鶏肉を密封する構造であるが、このフィルムは不停止で移動し、能率がよく、しかも前記フィルムを縦横に引き伸ばし、その収縮力を利用してトレイとの密着を図ると共に、フィルム開口縁を合掌状に溶着シールしているので、肉汁の漏出が防止されるなど、前記従来装置の欠点を改善する効果を備えたのに加え、1商品当たりのフィルム使用量を30%減らし、商品の表底両面への広告印刷を可能とする効果も得られる。

  「電着ゾルゲル法」 (特許第3438339号)
    稲澤 信二  (住友電気工業株式会社)
    山田 浩一  (住友電工プリントサーキット株式会社)

 基材に金属酸化物を被覆する液相法の一つであるゾルゲル法に関する発明で、1μm以上の被膜厚を得るために塗布すべき基材の周辺にのみ高濃度化する方法を見いだした。すなわち、ゾル液が正に帯電しており、適当な波長の光によりアシストできることに着目し、ゾル液を電気泳動により負の電圧を印加した基材の周辺部のみ高濃度化し、1回の塗工で1μm以上の皮膜を得た。


  ・「環境に優しい機械構造用鉛フリー快削鋼」 (特許第3460721号)
    松井 直樹  (住友電気工業株式会社)
    渡里 宏二  (住友電気工業株式会社)
    西   隆之  (住友電気工業株式会社)
    加藤   徹  (住友電気工業株式会社)

    松本   斉  (株式会社住友金属小倉)
    多比良 裕章  (住友電気工業株式会社)

 本発明では環境に配慮するという観点から同じ重金属の適用を除外し、通常の鋼に含まれる硫化物と酸化物を鋼の精錬・鋳造過程において同時に形態制御することで鉛快削鋼と同等の性能を付与することを可能とした。具体的には製鋼工程での精錬と鋳造を精緻にコントロールすることによって鋼中に含まれる硬質な酸化物を工具寿命に対して有効に作用する軟質な酸化物に制御すると同時に、切屑処理性改善効果を最大限に発揮させる為に硫化物を鋼中に微細に分散させた。

 「機器接続ガス栓」 (特許第2904342号)
    木下 裕男  (大阪ガス株式会社)
    吉ア 一男  (光陽産業株式会社)

    田村   隆  (光陽産業株式会社)


 ガス栓本体のガス流出通路側に自在ナットを有し、自在ナットの一端部には、シール機能と自在に回動できる構造を設け、この自在ナットの他端部に機器接続用のねじ部を形成している構造のガス栓を開発した。この構造により、位置調整が可能であるフレキ管をこのガス栓と接続することで、ガス栓と機器の直接接続を実現した。

平成16年度大阪優秀発明功績賞

    中 村 邦 夫 (松下電器産業株式会社 代表取締役社長)